できればムカつかずに生きたい

できればムカつかずに生きたい できればムカつかずに生きたい

著者:田口ランディ
出版社:晶文社
本体価格:1,400円

できればムカつかずに生きたい コメント

 いまだに根絶できない戦争や身近な不合理や曇りに対しても浄化する気持ちで、透明に悲しむ眼差しを向けることで、憎しみすらも祈りに変わり、あらゆるものから光を引き出すことができる、そういうことを信じて生きていけば、、。
 この本は、生きにくいいまの時代で、よりよく生きるための方策を示唆するエッセイ集であり、婦人公論文芸賞を受賞しています。
 ぜひ、この本を購入して、いろいろなことを感じてみて下さい。

できればムカつかずに生きたい 目次

十七歳の頃、なにしてました?
ひきこもりの心象風景
断層の向こうのお父さんたち
私はいかに父と和解したか
恨みつらみの晴らし方
春の陽をあびて蘇る
お母さんを守る子供たち
いじめってなんだろう?
プチ家出をする少女たち
できればムカつかずに生きたい
「わからない」を生きる
わたしの身体は誰のもの?
音のない世界の天才写真家
アイヌのシャーマンと出会う
ひかりのあめふるしま 屋久島
子供の力
閉じた世界と開いた世界――主体なき犯罪者たち
まっすぐな言葉の模索
寺山修司さんの宿題
インターネットライターへの道
学生のみなさま、ありがとう
私は父性を持ちたい
人はなぜチャットにはまるのか?
インドでは修行者、日本では変人の謎
人生を再編集する試み
悲しみのための装置
あとがき

できればムカつかずに生きたい

やって来るものを受け止めながら手放していけばいいんだよ。どんなものでも自分にやって来るものはプレゼントだ。受け止めて手放せばいい。そうしていくと、受け止めた衝撃で流れが起こって自然にあるべき方に流れていく。自分でありながら、でも流されろ。自分の外から来るものは、全部、プレゼントだ」

わたしの身体は誰のもの?

 恋愛というのも、相手を所有したいと思ったとたん相手に見事に支配されてしまう。お金というのも、お金を所有したいと切望したとたん、お金に支配されてしまう。およそなにかを所有して意のままにあやつりたいと思った瞬間から、その対象物に自分は所有されてしまう
 ダイエットしようとして、食物を取り込むのをやめると、身体が意のままにならなくなる。ところが感謝しながら食べていると、身体は健康になり心と身体が一致してくる
 命と命の連鎖に支えられて、人は《自分を所有する》という意識を超えるのだ。
 身体は心についていつも語っている。本当に心が望むものは何かを、身体語で。
 それを頭は知らない。

アイヌのシャーマンと出会う

「人間の義務はね、万物の霊長としてすべての生き物のために祈る事なんだよ」
「それが、天と地の間に垂直に立つことのできる人間の役目だ。祈り、すべての生命の魂を天に送ることが人間の義務なんだ。神はそのために人間を守ってくれるんだよ」
 この世界が美しいのは、美しいと感じる人間がいるからだ。
 その世界に意味を、美しい意味を与え続けるのが、人間の役割なのだ。

悲しみのための装置

 あまりにも悲惨な事件、大量虐殺、残虐な犯罪、戦争、災害、そのような悲惨な出来事の被害者に対して、「私」という個人がその意味を全部引き受けようとしたなら、発病するしかないだろう、と彼女は言うのだ。それは個人が引きうけるには重すぎる事実である、と。
「じゃあ、今はどうやって悲惨を受け止めているんですか?」
「私はある時、悲しみと愛は同じ波動をもっている、と感じたの。突然に悲しみと愛は全く表裏一体だ、と感じたのね」
 彼女は「憎しみは人を壊すけど、悲しみは人を壊さない」と断言する。
「だから私はただ悲しむ。透明に悲しむようになった。悲しみを胸に抱いたまま、すうっと時を通過できるようになった。悲しみは私を壊さない。悲しみは憎しみを祈りに変える